シエスタといえば長い昼休み(休憩+昼寝)。
社会敵に習慣化している国はスペイン語圏を中心に世界30カ国以上あるそうだ。
シエスタといえばスペインの長めの休憩を取る習慣のこと。
長い昼寝をイメージする人もいるだろうが、実際には午後1時頃から2、3時間ほどの休憩のことだ。
もちろん長い昼寝をする人もいるかもしれないが、ほとんどの人は、単なる休憩で済ますようだ。
昼食後の眠気と闘いながら仕事をする人にとっては、うらやましい習慣かもしれない。
シエスタが生まれたのは、体調管理のためと考えられている。
太陽と情熱の国と言われるスペイン。
さすがに夏ともなれば、暑さと直射日光を嫌う人が多いらしい。
情熱はともかく体熱の上がり過ぎは身体によくないということなのだろう。
それが証拠にシエスタを認めている国は、緯度の低い熱帯、亜熱帯地域が多い。
シエスタが文化的に認められている国は?
- ヨーロッパ:イタリア、ギリシア、スペイン、セルビア・モンテネグロ、ポルトガル
- 中東:イラン、エジプト、オマーン、シリア
- アフリカ:ウガンダ、エチオピア、ケニア、シエラレオネ、セネガル、ナイジェリア、ブルキナファソ、マリ
- 北中南米:メキシコ、ブラジル、コロンビア、ハイチ、ジャマイカ、パラグアイ
- アジア:アフガニスタン、インド、インドネシア、カンボジア、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン、中国(チベット)、台湾
- オセアニア:オーストラリア、サモア、パプア・ニューギニア
シエスタと聞くと、怠け者や生産性の低さというイメージがあるかもしれない。
これは寝不足自慢の日本人がする偏見ではなく、米国人や欧州人も同じ様な印象を持っているようだ。
しかしながら、少なくともスペインでは、夕方から夜まで店を再開するので、労働時間の長さは他の国々とさほど変わらないようだ。
シエスタはともかく、長時間の昼寝と夜間の睡眠をとる生活リズムは、いったん身につくとなかなか抜け出せない。
長い昼寝は夜の眠気が減るため、就寝時刻が遅くなるだけでなく、睡眠時間も短くなる。
その睡眠時間の不足を補うために、長い昼寝が必要になるという悪循環となってしまうのだ。
1時間を超える昼寝は死亡危険率が急増
本来、siesta(シエスタ) という言葉は、ラテン語の hora sexta(第六時)における sexta を由来とする。すなわち日の出を基準として「第6時」(日の出から6時間後)、つまり、おおよそ正午辺りの時間帯の意味である。ポルトガル語では、同語源の語で sesta(セスタ)と呼ばれる。
一般的に人間のサーカディアンリズムは、午前中は上昇し、正午頃が最も高く、午後2~3時ごろにかけて活性が低下する。午後4時すぎに再び上昇に転じて数時間活性化した後、就寝時間に向けて再び低下、就寝中の深夜2~3時に最低となる。ちょうどシエスタの時間帯あたりに眠気が強まるのだ。シエスタで昼寝をするのは、このような睡眠のリズムも利用している。
昼食後眠いのは誰のせい?
この昼食後の眠気くなるメカニズムは実はよく分かっていないのだ。
食後の副交感神経活動の高まりや、サーカディアンリズムの影響、覚醒に関わる脳内ホルモンの変動など諸説ある。
が、実は睡眠不足も一役買っているのだ。
と言うのも、睡眠障害のない健康な人でも、普段よりも1時間ほど長く眠らせる実験をした結果、昼食後の眠気はほとんど無くなるからである。
さて、多くの国々で容認されているシエスタだが、長く昼寝をし過ぎると、健康に悪影響を及ぼす可能性があることが多数の疫学調査からわかってきている。
例えば、シエスタに昼寝をする人は、しない人に比べて心筋梗塞や脳梗塞などによる死亡危険率が高くなる。特に時間が大事で、昼寝が1時間を超えると死亡危険率が急増し、2時間昼寝をする人は、しない人の約5倍にまで高まるなどの調査結果もでている。
長すぎる昼寝は認知症にもなりやすくなるそうだ。1時間以上の昼寝を取る高齢者は、アルツハイマー病の発症率がしない人に比べ2倍程度に高まるとの報告もある。
逆に短い昼寝は効果あり
逆に30分以内の昼寝では、心筋梗塞や認知症の発症リスクが低いことも報告されている。
アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβは、睡眠中に脳外へと排出されるのだが、(詳しくはまた別の記事で)残念なことに昼寝を長くとってもうまく排出されないのだ。
ということは、夜の眠りが悪くなれば原因物質の排出が滞り、発症リスクが高くなるのだ。
このことから、シエスタが有効か有害になるかどうかのカギは、昼寝時間を30分以内に抑えることにある。
まとめ 長い昼寝はナゼよくないのか?
目覚める前の睡眠状態が覚醒後にも持続する睡眠慣性の影響がある。これは、認知機能の著しい低下(飲酒運転や徹夜中よりも低下している)を起こしている状態。
昼寝中の睡眠時無呼吸による低酸素ストレスなどの可能性が高まる。というのが長い昼寝をすすめない理由である。
反対にこういった意見もある。
長い昼寝が心筋梗塞や認知症、アルツハイマーなどの原因になるのではなく、そのような病気を発症する可能性がある人だからこそ、体力低下による疲労感、気力の低下などから長い昼寝をとるのではないかと考えるグループもあるそうだ。簡単に言えば病気の兆候ではないかということだそうだ。
確かにこの意見も一理ありそうだが、少なくとも30分以内の昼寝を計画的にとることで、眠気が取れるだけではなく、午後のパフォーマンスが上がるのは明白だ。また、免疫機能が高まる、血圧が下がる、などの効果もある。
上手く昼寝を取ることは、現代社会において必須のスキルと言えるかもしれない。
日本にシエスタの習慣が根付くことはないかもしれないが、昼寝を習慣とすることはできなくもないだろう。