皆さんは自分に必要な睡眠時間をご存知だろうか?
一般的な日本人に必要な睡眠時間は、年齢によって差異はあるが成人では、7~9時間だ。
一方で、アメリカで100万人以上、日本で10万人以上の研究調査では、
成人のほとんどに最適な睡眠時間は、7時間程度との結果もある。
4時間以下でも10時間以上でも死亡率が上がるとの報告もあるが、どの研究も統計的にはそうであるという結果だ。
子どもの場合だと、3~5歳で11~13時間、6~12歳で10~11時間、11~17歳で8.5~9.25時間が理想といわれる。
もちろん個人差がある。
これよりも長い人もいれば、短い人もいるのだから、
自分にとっての最適な睡眠時間は平均時間と違ってもおかしくないのだ。
では、なぜ大人にとっても、子供と同じように9時間以上の睡眠が必要なのかもしれないのか?
実は、2016年10月26日 プレスリリースによる研究報告が潜在的睡眠不足への警鐘ということで発表された。
研究報告をしたのは、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター の精神保健研究所・精神生理研究部 三島和夫医師。(http://www.ncnp.go.jp/press/release.html?no=124)
『潜在的睡眠不足』の解消が内分泌機能改善につながることを明らかに
■本成果のポイント
1. 健康成人の必要睡眠時間を精密に測定した結果、平均約1時間の自覚していない睡眠不足(潜在的睡眠不足)が存在することが明らかになりました。
2. 潜在的睡眠不足の解消により、眠気のみならず、糖代謝、細胞代謝、ストレス応答などに関わる内分泌機能の改善が認められました。
3. 潜在的睡眠不足は自覚していないがゆえに長期間にわたり持続する危険性があり、中長期的な健康リスクに留意する必要があると考えられます。
プレスリリースより
簡単に要約すると
1.健康で睡眠が足りてると思っていても、平均1時間以上の睡眠不足になっている可能性が高い
2.この隠れ睡眠不足が解消すると、心身ともにストレスが解消される
3.隠れ睡眠不足なので、自覚が遅れ長期間ため込んでしまうので、病気になるリスクが高くなる
ということだ。
では、どんな実験をしてこのことが明らかになったのだろうか。
9日間毎日眠るのがお仕事の大実験
集めたのは平均23.4歳の男性。
普段から睡眠時間をしっかりとって生活をしていると自信満々。
実際に実験開始までの2週間の平均睡眠時間は7時間22分。
日中の眠気はなく、機械での測定でも質、量ともに問題なし。
この元気な男性にしてもらったのが、ひたすら眠くなくなるまで寝ること。
どうしたかというと、
完全に防音・遮光された特殊な寝室で眠る。それも12時間は部屋から出られない。
そうすると、普段よりも長く寝る。2度寝、3度寝と。
睡眠不足はないと言っていたけれど、
初日はなんと平均10時間33分。
えっ3時間も多く寝たの?
ということで、睡眠に不足はないと言っていた皆さんは、
寝不足解消の寝だめに相当する「リバウンド睡眠」を取ることとなったのだ。
その後、日に日に睡眠時間は短くなり、15人の平均睡眠時間は8時間25分。
7日間で安定したことを考えると、睡眠不足の解消に1週間もの時間を要したのだ。
結果的には15名の必要な睡眠時間は7~9時間となった。
普段の睡眠時間では、短い人と長い人との間に4時間もの開きがあったのに、
必要睡眠時間には2時間しか差がなかったのも驚きだ。
この実験で何がわかったの?
1.心も体もストレスの少ない健康な体になった
眠気の解消だけではなく、空腹時血糖値の低下、基礎インシュリン分泌能の増大、甲状腺刺激ホルモンや遊離サイロキシン濃度の上昇、副腎皮質刺激ホルモンやコルチゾール濃度の低下など、糖代謝、細胞代謝、ストレス応答が、より良い状態(数値)になった。
これを内分泌機能というが、普段十分な睡眠時間(習慣的睡眠時間)を取っているのに、知らない間に心身は疲れていたのだ。
2.睡眠が足りていると思っていても、実は足りていない人が多い
本当に必要な睡眠時間の個人差は、もっとも短い人で7時間17分、長い人で9時間15分と、2時間あった。
一方実際に普段寝ている時間には、長い人と短い人で4時間もの差がある。ということは、一部の人は、全く足りていないにもかかわらず、寝不足ではないと認識しているのだ。この実験では平均1時間、最大で3.5時間あった。ということは普段から睡眠不足で悩んでいる人は、必要とする睡眠時間とのギャップはかなりのものだと推測できる。
3.睡眠不足で削られるのは浅い睡眠とレム睡眠
睡眠の深さには4つのステージがある。このうちステージ1・2が削られるのだ。反対にレム睡眠と呼ばれるステージ3・4の深い睡眠は、ほぼ削られることはない。
では、浅い睡眠が削られるとどうなるか。それは1.で示した内分泌機能が正常に働かない状態になるのだ。要するに心身が健康ではない状態に向かって、負債が積みあがっていくのである。
4.脳波上の睡眠不足は2日目に解消するが、内分泌機能の回復は数日必要
週末の寝だめは有効に見えるが、実は完全には回復していない。ということである。
普段の睡眠不足が長年にわたり積みあがっていくということは、心臓や脳への負担が多くなり、若年性突然死にも関係しているのではないだろうか。
特に、若者の携帯・スマホへの依存による睡眠時間の不足は、非常に危険であると言わざるを得ないであろう。
まとめ
自覚できない睡眠不足かある人が大多数いる可能性が高い
睡眠不足を解消するには週末の一日ではできない
病気になるリスクが高くなる