眠りのトラブル− 寝つきが悪い(入眠障害)
床に入ってから、睡眠に入るまでの時間を睡眠潜時といいますが、精神的なストレス、うつや睡眠リズムが乱れているために寝つきが悪いのを入眠障害といい、一般に不眠というとこれを指すといってもいいでしょう。
入眠障害の原因を上げてみると
1. 精神的なストレス、うつ等によるもの
2. 生体リズムがずれてしまっているもの
3. 昼間の睡眠を取った為によるもの(2の変形)
4. 夜型生活でメラトニン分泌が不十分
5. 寝る前にカフェインなどの興奮物質を摂ることによるもの
6. 体質的なもの(冷え性など)
7. 睡眠環境が悪い(温度・湿度・明かり・音等)
など、ちょっと整理しきれないぐらいあります。寝る前にベッドで読書やテレビを見ていて眠れない、なんてのもあります。
まず、眠りを妨げるような行動や環境を減らしましょう。
1. 寝る前にカフェインなどを取らない
2. 部屋を明るくしすぎない、昼光色をやめて電球色に (メラトニン抑制をふせぐ)
3. 寝る前にテレビを見ない (同じ効果)
4. 寝る前にパソコンとケータイは禁止、特にLEDはスペクトル的にメラトニン抑制が強いです。
寝酒(ナイトキャップ)は入眠を促進しますが、睡眠の質が低下しますのでできる限り避けて下さい。
光刺激の問題-強い光やLED光源によるメラトニン抑制
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最近省エネということで、LED照明が増えてきました。
一般に夜に明るい光を浴びると、睡眠ホルモンともいえるメラトニンの分泌が抑制され、睡眠に影響を及ぼすことがわかっています。コンビニなどの高照度の店舗などは特に子どもにはおすすめできません。
また、昼光色など色温度が高い照明は、電球色などの色温度の低い照明に比べて低い照度でもメラトニンが抑制されることがわかっています。もっとも影響が大きいのは波長が460〜470μmの青色で、白色LEDに多く含まれるために実験ではステージ3〜4の深睡眠が少なくなるなどの報告が上がっています。
入眠障害を引き起こす照明の問題は
1. 明るすぎるリビングルーム(特に白色LED)
2. 夜間に明るすぎる店舗などにいくこと
3. LEDバックライトを使った大画面テレビ
4. LEDバックライトを使った携帯ゲーム機やスマートホン
このように、最近出回ってきた大画面テレビ・携帯ゲーム機・スマートホンなどがどのように睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。
入眠しにくい人や、睡眠を多く取る必要がある子どもは特に照明等に気をつけていただきたいと思います。
気持ち良く入眠するために(温度をコントロールする)
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入眠時の特徴の一つに、深部体温を下げるために手足の抹消血管から熱が放出されるということがあります。赤ちゃんや子どもは眠たくなると、耳たぶ・手足などが温かくなってくるのが典型です。この時に手足が冷えている、あるいは血行が悪いと深部体温が放出されないために、入眠しにくくなります。一旦眠ってしまうと
そのための対策は
1.寝る前に適温の風呂に入る
2.入眠の90分ぐらい前に軽い運動をする(ウォーク、汗をかかない程度のエクササイズ)
など、体温を少し高めて血液の循環をすばやくさせることが大切です。
足利工業大学睡眠センターの研究によれば、適度な入浴によって体温が高くなり、深部体温の温度傾斜をつけることにより、入眠が容易になったとのことです。同様に軽い運動や、カプサイシン(唐辛子)などの取得も、代謝を一時的に高めることにより、温度勾配が強くなって、入眠しやすくなるとのことでした。
使用時に快適度の高い素材を使った寝具やマットレス選びも大切です。
冷え性気味の方は、前もってふとん乾燥機や電気毛布などで寝具を暖めておくと、熱を奪われないので入眠しやすくなります。もっとも電気毛布はそのまましておくと、身体の深部体温を下げるのを妨げます。睡眠の質が落ちるだけでなく無用な発汗を促し、皮膚が乾燥したり、喉が渇く原因にもなりますので、寝る時には切るか、どうしても保温力が不足する場合は低温(30〜32℃ぐらい)にしてください。
寝具の接触温感も入眠時の快適度を大きく向上しますので重要です。
逆に暑い夏は皮膚表面温度と気温が同じになり、熱放射がうまくいきにくくなります。そのために皮膚表面の接触冷感を高め、麻のように熱伝導性の高い素材を使って温度を素早く逃がす工夫が必要となります。不快指数が高くなるので、素早い汗の吸収発散が同時に求められます。
これは本来25時間といわれる生体リズム(サーカディアン・リズム)が、うまくリセットされなかったり、過度の夜更かしなどの生活リズムの乱れから生ずることが多いといわれます。このような場合は睡眠外来で受診が必要と思われます。
対応策としては決まった時間に朝起きて、太陽の光を十分にあびるなど、体内時計をリセットすることが大切ですね。
特に高齢になると、運動量が減るために1日のメリハリが付きにくくなります。日中に適度な運動をおすすめします。
睡眠教育ハンドブック「睡眠教育のための生活指針」滋賀医科大学睡眠学講座・滋賀大学教育学部発行
「快眠ライフと睡眠学」滋賀医科大学睡眠学講座発行 より引用・抜粋
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