快眠のための寝具 - 寝床内温度33℃湿度50%
通常ヒトの体温は36〜36.5度ですが、これは深部体温のことで、皮膚表面の温度は32℃程度です。従って、寝具が体で温められて体温と平衡状態になるのは32〜33℃といえるでしょう。深部体温は入眠の前から下がり始めて1〜2℃下がり、覚醒へ向けてコルチゾールの分泌が増えるとともに徐々に体温があがってきます。
よく「暖かい布団」という表現をされるように、寝具にとってもっとも大切なのはまず保温です。保温が悪いと体の熱がうばわれます。しかしながらそれだけではないのです。
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それでは、気温の高い夏の夜の温度を考えてみてください。28℃から熱帯夜といわれますから、33℃もあればとても寝られたものではありません。その一番大きな原因は湿度なのです。33℃で湿度が70%や80%もあれば不快指数がこの上なく上がってしまいます。逆に湿度が低い国ではたとえ気温が高くてもそれほど寝苦しさは感じません。日本の夏が暑いのは気温が高いのではなく湿度が高い、すなわち「蒸し暑い」からにほかならないのです。
特に最初のノンレム睡眠は最も深い睡眠ですが、その深さに比例して大量の汗をかきます。この急激な発汗による湿度変化に対して、寝具が十分吸湿と発散ができる素材でないと蒸れ感が増大します。
ポリエステル繊維のわたを使った布団で「ポリエステルの繊維が中空になっているので吸湿発散性にすぐれています」というものがありますが、実際に使うと蒸れて使えたものではありません。それはJISの吸湿発散性のテストが8時間という長時間での数字を元にするからなのです。先日もあるメーカーさんがウォッシャブルタイプのウールと通常のウールの吸湿発散のグラフを持ってきて、「ウォッシャブルタイプの方が吸湿性が良いですよ」という説明をしていました。確かに8時間後の数字はそうなのですが、最初の1時間の数字は通常のウールの方が倍ぐらい良いのです。
快適な睡眠のために大切なことは、最初と2番目ぐらいのノンレム睡眠時の発汗で生じる急激な湿度変化に対応できなければならないのですが、この場合必ずしもそうはいえません。ウォッシャブルウールは防縮性を出すためにウールの表面のスケール(キューティクル)を取り除いてしまうわけですから、決して吸湿性が良いはずはなく、この話に見られるように数字をうまく使うと、事実とは違った結果になってしまいますので、メーカーのいうことを鵜呑みにするわけにはいきません。
冷え性の方がなかなか寝付けない最大の理由は、毛細血管の血行が悪いために、体の体温を放出できず深部体温が下がりにくいからです。同様に、寝具が冷えていると血管は縮まって、結果入眠しにくくなります。冷え性の人は寝具を暖めておくと眠りやすいというのはこのメカニズムに基づいています。ところが、電気毛布などをそのまま使い続けていると、外部から熱が加わるために深部体温が下がりません。電気毛布を使用すると熟眠感が少なくなるというのはこれが原因なのです。入眠前は暖かく、その後は温度を下げることが大切です。
一方、一旦入眠してしまうと深部体温は下がり続けながら、体の温度分布は均一になり、足の温度などが上がってきます。この時に湿度が高いと足の蒸れ感が大きくなるのです。
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