羽毛布団のリフォームを注文するには
|
羽毛布団のリフォームの現場から気がつくこと |
最近は量販店で1万円以下で販売されることも珍しくありません。お客様からも「買った方が安いじゃない」というお声もいただきます。どうすればいいかというと。
ある程度しっかりしたものはリフォームをおすすめします。例えば10年前に10万円出して購入されたとすると、現在でも同じグレードの品を買おうとすると、それなりの金額が必要です。特に最近はグース高、ダック値崩れ、という状況ですから、特にグースの羽毛をお使いの方はリフォームをされた方がいいでしょう。良いものは2回目のリフォームも十分に耐えます。
特筆すべきはカウフマン社の原料で、素材の良さがリフォームにはっきりと出ます。通常解体した羽毛は洗濯と除塵によって10〜20%ぐらい目減りしますが、カウフマン社の原料はそれが非常に少なく、良い羽毛であることを証明しています。
逆に30〜40%も目減りする羽毛がありますが、こちらだと下取りをした方が良いぐらいです。羽毛のリフォームは羽毛の良さの通信簿みたいなものです。
羽毛ふとんほど価格と品質が一致しないものはない、ともいわれます。店頭で販売されているものについては、概ね一致すると考えて良いのですが、訪問販売などの無店舗販売ではずいぶんとあくどいものも、散見します。
リフォームは羽毛布団の通信簿といっていいでしょう。再洗いをして除塵と選別を行うリフレッシュ過程で、はっきりしてしまうのです。一般的に、ダウンの成熟度が低い羽毛は、使用しているうちにダウンボールが壊れてしまいますので、ダウンをリフレッシュした際の目減りが大きく出てしまいます。一般的には10〜15%程度が目減りしますが、品質によっては30〜40%も減るものがあります。
中には、ダウンボールが大きくて「おっ、いいじゃないか」と思われる原料でも、嵩高が戻らないものもあります。おそらく生育環境に問題があるのか、ダウンボールの反発力が失われていることもあります。
特筆すべきはカウフマン社の原料で、素材の良さがリフォームにはっきりと出ます。通常解体した羽毛は洗濯と除塵によって10〜20%ぐらい目減りしますが、カウフマン社の原料はそれが非常に少なく、良い羽毛であることを証明しています。決して安くない原料ですが、飼育環境を見ても、やはり健康な鳥の羽毛を選別するというポリシーが徹底しているからなのでしょう。
実はかつては私の店でもそうでしたが、羽毛布団は「あまり干さなくて良い」とか「日干しをしたらダメ」と云われて販売されてきました。羽毛布団の普及期の始めは、木綿わたの布団を使っていらっしゃる方がほとんどでしたので、木綿わたのように屋根の上に頻繁に日干しをすると生地の寿命が短くなってしまうから、というのが真意でしたが、これが「干さなくて良い、干したらダメ」という誤解を生んでいます。
たしかに、羽毛や羊毛などの動物性天然繊維は、綿なのどの植物性天然繊維に比べると、放湿製が優れていますので、新しい空気を入れ換えてやれば、ある程度湿気が逃げてくれるからです。しかしながら、羽毛布団に使われる生地はほとんどが綿ですから、定期的には軽く日干しをしていただいた方が良いのです。
また、カバーをこまめに替えると云うことも大切です。カバーをあまり替えなかったり、日干しをしなかったりすると、汗が羽毛にこびりついて羽毛の劣化が激しくなります。こうなると、リフレッシュを行っても、なかなか元には戻りません。
今から10〜15年前に、側生地に絹交の生地(例:絹50%綿50%)を使用した羽毛布団が流行りました。絹を混紡すると、光沢が生れ肌触りが柔らかくなるために、高級感を出すためにかなり使われました。
しかし、綿に比べて絹は弱い繊維です。使用状況や生地の程度にもよりますが、8〜10年ほど経つと、生地が弱くなって破れ、布団カバーの中に飛び散ってきます。もしそのような状況になれば、できるだけ早くリフォームするようにしてください。
ドイツ製などの外国製羽毛布団やアイダーダウンのリフォーム |
カウフマン社を始めとして、羽毛布団に歴史のあるヨーロッパでは軽量の良い羽毛布団があります。厳密にいいますと、ダウン率の表示などは日本の方が厳密で優れていますが、ヨーロッパの羽毛布団の特徴は生地が平織(バティスト)がほとんどで、軽いということでしょう。
このような軽量の羽毛布団を通常のリフォームにすると、どうしても重くなってしまいます。ヨーロッパの平織りの羽毛生地はその重量が高級品で85〜90g/㎡ぐらい、良いものだと80g/㎡を切ります。一方、国内で流通する綿サテンの羽毛布団用生地は110〜140g/㎡のものがほとんどで、生地だけで1.5倍以上違うのです。
そこで、眠りのプロショップSawadaでは国産の綿生地で93g/㎡、ヨーロッパからの輸入生地で79g/㎡のものを用意しています。キルティングなどもご希望に合わせて、ヨーロッパ製のようなキルティングパターンもできますので、風合いを同じようにしてリフォームしたいという方はご相談下さい。
最高級羽毛であるアイダーダウンのリフォームも対応しています。アイダーダウンは羽毛と羽毛の絡みが非常に強いために、通常の軽量方法では正確に計量しにくいだけでなく、攪拌時に羽毛を痛めてしまうことがあります。
下の画像はカウフマン社でのアイダーダウンの計測方法です。絡みが強いために、このように手で一マス一マス分を計量して行なうことにより、正確でなおかつ羽毛を痛めない仕上げになります。
眠りのプロショップSawadaでは、洗浄後にこのように一マスずつ計量し、側に充填します。側はほとんどの場合完全立体キルト仕上げとなります。生地もヨーロッパのリヨセル100%の生地を始め、アイダーダウンの特性を生かす側生地を用意しています。
KAUFFMANN社 |
一マスずつ計量 |
お預りした元のアイダーダウン |
洗浄後 |
洗浄後の羽毛 |
一マスずつ計量して 充填する |
羽毛布団のリフレッシュ工程 |
眠りのプロショップSawadaが店頭に導入しているドイツ・Lorch社の羽毛リフレッシュマシンは、店頭設置としては日本で2軒だけです。このLorchのマシンによる羽毛直洗いは日本羽毛協会の羽毛リフォームの工程でも一番レベルの高いプレミアムダウンウォッシュに相当します。さらに、羽毛除塵機とサイクロン式充填機を採用することにより、トリプル除塵によって可能な限りホコリやゴミを減らしています。
Lorch社の羽毛リフレッシュマシン 左側は羽毛除塵機-右側奥が羽毛計量器-右側手前がサイクロン式充機 |
まず、羽毛を解体し洗濯機に投入します。もちろん羽毛のままでは洗濯機に入れにくいので、掃除機のような空気を使って行います。解体の方法もいろいろありますが、眠りのプロショップSawadaでは一マスずつ一番手間のかかる方法で解体し、元の羽毛をできるだけ損なわないようにします。
リフォームの場合は1回洗いの2回すすぎ。羽毛用の安全な有機系洗剤を使います。羽毛の洗浄方法については、業者によってさまざまな考え方があります。安全のために水だけで洗うというもの、環境への負荷を考えて重曹をを使うというものなどです。眠りのプロショップSawadaで有機系の洗剤を使います。というのも、10年以上使われた羽毛はかなり汚れており、水洗いだけでは不十分ではないかということと、重曹のようなアルカリ系の洗剤は羽毛を痛めやすいのではないかという判断からです。
洗浄とすすぎの段階で羽毛に含まれるゴミなども取り除かれます
完全に洗浄・すすぎを終え脱水された羽毛は、上記画像のように洗浄機の内側にへばりついています。これをほぐしながら、乾燥機へ送ります。乾燥機は約120℃で羽毛を乾燥しますが、この際に帯電防止剤に加え、独自に自然素材を使った安全な抗菌防臭剤であるアクアミストを噴射します。乾燥機の半分は網の目のメッシュ構造になっており、攪拌乾燥されている間、ゴミやホコリは外側へ吸い出されます。湿度が40%になるまで乾燥が行われます。
乾燥が終了した羽毛はオゾン処理をされます。これによって除菌と脱臭を行います。
乾燥された羽毛は、選別機1(左手前側の部分)へ送られます。選別機1には紫外線の殺菌灯が設備されており、殺菌が行われます。次に行われるのは選別です。選別機1から風を送り、上向きのダクトを通って選別機2(右奥側)に羽毛が送られます。この時、送り込む風の強さによって軽い羽毛とフェザーのような重い羽根を分けることが可能になります。現在ではダウン率が85%以上のものがほとんどなので、あまり必要性はないのですが、古いタイプの羽毛ふとんでダウン率の低いものは、この作業によって軽いダウンだけを選別することができます。
この時に、洗濯乾燥しても元に戻らないダウンやゴミなどは選別されずに取り除かれます。
選別後に残ったホコリ |
選別が終わった羽毛は、風圧によって専用の袋に送られ、羽毛のリフレッシュは終了します。しかし、現在では、直接工程6の羽毛の除塵へすすみます。
Lorch社の羽毛リフレッシュマシンの選別が終わった最終段階の槽から、羽毛除塵機へ吸い込みを行います。除塵機の中は小さな穴が無数に開いた円筒形になっていて、その中を羽毛が攪拌されます。攪拌をしながら、円筒の左右から交互に空気を吸い出します。これによって、羽毛に含まれるゴミやファイバーをかなり取り除くことができるのです。除塵は通常10分間、ホコリが多そうな羽毛は12分間行います。除塵が終了すると、計量槽へ送られます。実際かなりの量のゴミが含まれており、それを取り除くことは大切なことです。
羽毛除塵機 |
除塵機の内部 |
最終ホコリはこちらに |
ホコリを吸い取った後にも結構残っている |
充填機には3つの計量機があります。全体の重量を計る計量機A、交互にマスに入れるために用意された2つの槽の計量機BとC。2つの槽は一方が充填を行っている間に、もう一方の槽は次のマスの充填分を計量します。設定は1g単位ですが、実際にはプラスマイナス1g+αぐらいの誤差が出てしまいます。
計量制御盤 左が計量槽1 右が計量槽2 |
各マスにどれぐらいの量を充填していくかは、パソコンによって計算します。一般の工場だと標準的な4×5で20マスの場合、均等に充填します。例えば1300gの場合は各マス65gです。眠りのプロショップSawadaは、もう少し細かく調整します。というのも、まず襟元はへたりやすいですし、保温力を高めるには中央部を厚めにしておいた方がいいからです。
ですから、同じ条件だと襟元は68g、身体の中央部66g、両サイドは62gといったように、充填量を変えながら仕上げて行くのです。これも自家製だから手間をかけて行うことができるのです。
羽毛を充填するノズルの直前にはサイクロンが置かれています。計量槽より、円筒形の上部から羽毛が吸い込まれ、円筒に沿って回転しながら下へ落ちていき、そこで充填ノズルへ送られます。この時に、重いゴミやチリのようなものは下へ落ちるようになっています。これによって、今までの段階で取り切れなかった、少し重いゴミなどを取り除くのです。
サイクロン方式の充填方法は通常の工場にある充機に比べると、時間がかかり効率は良くありません。しかし、できる限り羽毛のゴミやホコリを取って、安心して使えるようなリフォームに取り組んでいます。
サイクロンの下にはゴミが溜まります |
実際にサイクロンを動かしてみると、リフォームの羽毛はもちろんのこと、新品の羽毛でも結構ゴミが取れることに驚かされます。私どもが使用しているカウフマン社や河田フェザー社は洗浄やホコリの少ない点では定評のある、世界でもトップクラスの原料メーカーですが、それでも完全にホコリやゴミを取り切ることはできないということでしょう。
洗浄の不十分な新品の羽毛ならリフレッシュ工程を最初から行なう必要があるでしょう。
最後はミシンで吹き込み口を止めて出来上がり!