勉強したことをできるだけ覚えていたいと願うのは、学生だけではないだろう。
実は、睡眠中の方が、今覚えた記憶を曖昧にしたり間違えて覚えることに対して、起きている時よりも強い抵抗力を持つという。いうなれば、正しく覚えていられるということだ。
少し難しくなるが、記憶はまず脳の海馬に蓄えられ、すぐには定着しない。
記憶した後にその記憶を再び思いだすことで、始めて脳内の新皮質に移り、長期的に保管されるのだ。
パソコンでいうと画面に表示されている画像を、名前を付けてハードディスクに保存するようなものだ。
しかし、起きている時にもう一度覚えたことを思い出そうとすると、はっきりと思い出せず、記憶として定着しないことがある。
たとえば、ある英文を暗記した後で、次の英文を暗記し始めると、1つめの英文を思い出そうとしても曖昧になり、長期記憶として保存されにくくなるのだ。
睡眠時は記憶定着の妨害がされにくい
睡眠中に同様の記憶の保管が妨害されるかを研究した結果がある。
実験では、まず、24人に、動物や日常的に目にする物体を描いた15種類のカードの図柄を記憶してもらった。記憶する間、24人には、わずかに不快感のある臭いにさらされた。
40分後、半数には、1度目のカードと少しだけ図柄の異なるカード群を記憶してもらった。この際、1度目の実験でかいだ臭いを再度かいでもらった。これは1度目の実験を思い出す効果を狙ったものだ。
一方、残りのひとには1度目の実験の臭いにさらされた状態で軽い睡眠を取った後に2度目のカードを記憶してもらった。その後、両グループに1度目に覚えたカードについてテストを行った。
驚くべきことに、睡眠したグループの方が、睡眠しなかったグループよりも良い結果となった。睡眠しなかったグループは60%の正解率だったが、睡眠したグループの正解率は平均85%に上った。
記憶保管は睡眠直後から始まる
この実験結果を踏まえ、脳の状態を分析したところ、眠りに入るとわずか数分で海馬から新皮質への新情報の移動が始まり、40分の睡眠後には長期保管の領域に、十分な量の記憶が保管されたのだ。
まとめ
このことからわかることは、短期間での詰込みは長期記憶として定着しないということが言えるのではないだろうか。
また、日々の学習体験を記憶として定着させるには、学習直後の睡眠が効果的であるということも言える。
試験前に慌てて勉強するのではなく、コツコツと努力した結果が長期記憶として身につき、成績となって結果に表れるのだ。
特にこの学習方法は、語学に効果が大きいそうだ。英語の勉強やその他の語学学習に取り入れてみてはいかがだろうか。
参考:記憶定着には「すぐ睡眠」が効果的、独研究(AFPBB News)